アーチコラム 【野球肘を予防する】野球肘を防ぎたい人のためのピッチングフォームの考え方 (名古屋市緑区 スポーツラボ鍼整骨院/A-Village滝ノ水)
子どもから大人まで、野球での肘の痛みを抱えている方は多くいます。
日本整形外科学会、全日本野球協会の発表でも肘の痛みを訴える選手が多いことがわかりました。
データはこちら▼
https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/2016_survey_childrensbaseball.pdf
野球肘の症状・治療・予防について考えていきたいと思います。
野球肘とは
投球のしすぎによる、筋肉の張りから、
徐々に痛みへと変わり、最後には肘の曲がりや
伸びが悪くなってしまうケガのことを言います。
痛みは肘の内側から外側、
さらには後ろと様々な場所で
起こるものの総称を野球肘と呼びます。
代表的なもので、
肘の内側が痛くなるものに
「上腕骨内側上顆障害(リトルリーグ肘)」
「上腕骨内側上顆裂離」
「上腕骨内側上顆骨端線閉鎖不全」
「上腕骨内側上顆骨端線離開」
「内側側副靭帯損傷」
「前腕屈筋群の障害」
などがあります。
肘の外側が痛くなるものに
「離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭障害)」
などがあります。
肘の後ろが痛くなるものに
「肘頭骨端線閉鎖不全」
などがあります。
これらの症状が出た場合にまずは
病院での精密検査を受けることをお勧めしています。
そしてこれらの痛みを取り除いていくには、
骨折によるものであれば
超音波治療を行うなど、
骨そのものの治癒を促進するものが必要で、
筋肉によるものであれば、
その筋肉をやわらかくするマッサージなども必要です。
ですが、ここで疑問も持っていただきたいものです。
なぜ『投げる』という同じ行為なのに、
痛い場所、筋肉が硬くなる場所が
選手によって違うのでしょうか?
さらには、あの選手は痛くなくて、自分は痛い。
何が隠されているのでしょうか?
私たちは、ピッチングフォーム(投げ方)と考えています。
そしてコーチではない私たちができることがあります。
体の動かし方、
地面の力を使う方法、
そして体のプロだからこそできる
体に負担がなく球速が上がる方法を
お伝えしています。
ポイントとなるのは
『ピッチングをシンプルに』
という事です。
肘の位置が・・・
体が突っ込みすぎ・・・
インステップ、アウトステップ・・・
たくさんの伝え方をされてしまっている選手は、頭が混乱し悩みます。
悩むと体は覚えることを拒否する仕組みになっています。
投球動作とは、反復練習ができるぐらいシンプルにすることが大切です。
以下私たちのピッチングフォーム・投げ方の考えです。
1,ワインドアップ期
ワインドアップ期とは『動き出して軸足の片足立ちが完成するまで』
このフェーズで大切なことは、
①位置エネルギーを使う事
②右(左)投げなら右(左)足の床からの反力をもらう事
この2つです。
〈足を高く上げる理由は必ずある〉
①背の高い選手が優位なのがここです。
ジェットコースターでよく例えますが、
高いところから落ちていく方がスピードがでるのか、
低いところから落ちていく方がスピードがでるのか。
僕なら高い位置を推奨しますね。
②床反力の理解が必要ですが、
背の低い選手もこれを活かせば問題ないです。
ただし、このもらい方次第で
「パワー」になるか
「痛み」になるかが決まってきます。
2.アーリーコッキング期
アーリーコッキング期とは『踏み出し脚が地面に着くまで』
このフェーズで大切なことは、
①グローブ側の手と踏み出し脚のタイミングを合わせること
②・体を開かない
(キャッチャーに胸を見せない)ようにする
・首をしっかり回旋させる(肩を開かない)
・右(左)投げなら左(右)股関節を
内旋させる(骨盤の開きを抑える)
この2つです。
①ここはグローブ側の手の重みと踏み出し脚の
脚の重みを同時に出して行くことで、加速します。
加速して前に行くという行為は、決して悪いものではありません。
野球人が「突っ込む」という表現をしますが、
あれは足のストライド幅が狭ければ突っ込みやすくなります。
そして、ワインドアップから動き出す時に
支持側の股関節の使い方が上手ければ
そのようになることはありません。
このタイミングがかなりピッチングの中でも重要かと思います。
②体を開く、開かないという言葉も野球の世界では言われます。
ですが、「開くな」というだけで、
どこかを意識させた結果開かなくなったということは言いません。
その解決方法が上記の2点です。
肩が開きながら投げ急ぐタイプは、
首を最大限キャッチャー側へ回旋させましょう。
体の構造上、肩がついている胸郭は開かなくて済みます。
〈首をしっかり捻ると体の開きがなくなる〉
膝が割れるようなタイプは、
股関節を内旋といって、内股方向にすると
骨盤は開かずに踏み出し脚が地面につきます。
膝を開くという行為は、そちら方向に
骨盤が回旋しやすい余裕を生み出します。
この内股(内旋)は骨盤と大腿骨で作られる
股関節がガチっとロックする仕組みになっています。
走塁の際には、
右股関節は内股ではなく、がに股(外旋)の方が
スムーズにスタートが切れるという事です。
※過去にはこのアーリーコッキングフェーズで
体が後傾するような動きは、肘や肩を痛めると
言われていた時期もありますが、
体の理論上それで痛めるわけではないことが
分かってきました。
そこは気にしなくていいと思います。
3.レイトコッキング期
レイトコッキング期とは『踏み出し脚が地面に着いて、投球側の肩が最大外旋位』
このフェーズで大切なことは
①踏み出し脚を着いた際に、投球側はGH(肩関節)外旋位(結髪動作ぐらい)にあること。
②肘の屈曲角度が90度以内であること。
この2つです。
①多くのピッチャーがこの踏み出し脚が着いた瞬間に、投球側の肩関節が内旋位のままになっています。
この問題は、多くの痛みを引き起こす原因とされています。
理由は、踏み出し脚が地面に着いた際に、
床反力が一気に身体重心に向かい、
骨盤を左回旋させるからです。
骨盤は自力で回旋させるイメージを持っている方が多いですが、
この地球で生活してるからには、
足を床に着いた時の反力が回旋をさせる
という事も知っておく必要があります。
〈踏み出し脚を着いた際の床からの反力(黄色点線)と骨盤の回旋〉
この骨盤の回旋が始まると、その上にある胸郭も左回旋します。
その際に、肩関節の外旋(頭の後ろで手が組めるぐらい)が
準備できていれば、肘と肩にかかるストレスはかなり少なくなります。
しかし、これができていないとGH内旋位から、骨盤と胸郭が回旋して、肩はさらにしなるようにねじれることになります。
これが痛みの一つの原因です。
②肘の角度はこのフェーズで最も大切と言えます。
〈踏み出し脚を着いた際の投球側の肘の角度〉
その手前までは様々なフォームが存在してもいいと思います。
ですが、この踏み出し脚が着いた瞬間は
①でも話したように、骨盤の回旋が始まります。
もしこの時に、肘が90以下の曲がり具合だったらどうでしょうか。
遠心力がかかり、伸びている肘から先は後から出てきます。
この時が肘の内側を痛めやすい時でもあります。
なので、この時期には肘は90度は曲がっていないとダメなわけです。
4. アクセラレーション期
アクセラレーション期とは『最大外旋位からボールリリースまで』
このフェーズで大切なことは
①前足部(足のウラの前)に体重を乗せること
②エクステンションの意識をすること
この2つです。
アクセラレーションとは「加速」を意味します。
この時期はピッチングの際に最も加速している時ということです。
ではどうしたらこの時期に加速できるのでしょうか?
それはこのアクセラレーション期までにさかのぼる必要があります。
どうしたら加速できるかを頭に浮かべて迷った際は、
前に戻って考えてみてください。
そして①この加速してきた力を最大限ボールに乗せるには、
前足部に体重を乗せなければなりません。
〈前足部に体重を乗せる意識が必要〉
かかとに体重が残っているピッチャーは非常に多くて、
そんなピッチャーの特徴は「痛み」を訴えます。
かかとに体重が残ると何が問題かというと、
体幹の回旋と屈曲で投げることができなくなり、
いわゆる手投げになり、肩関節だけで投げることになります。
本来肩関節だけで100キロ以上の球を投げることは、限界が来ます。
それを毎日肩関節のねじれだけで投げれば、
周囲の筋肉、腱、関節唇は悲鳴を上げます。
肩の痛い人の改善点でもあるという事です。
次に②のエクステンション。
これはMLB(アメリカのメジャーリーグ)で研究が進んでいるもので、
投球時にピッチャーのマウンドからボールリリース位置までの距離を言います。
〈エクステンション=赤矢印〉
この距離はピッチャーの身長とほぼ一緒だと言われています。
先ほど話した前足部に体重を乗せることができると、
エクステンションは距離が延び、
リリースポイントはよりキャッチャーに近い位置になります。
これも「痛み」に対してとても有効な改善点となります。
5.フォロースルー期
フォロースルー期とは『ボールリリースからピッチング終了まで』
このフェーズで大切なことは
①アクセラレーション期での荷重を前足部に乗せていたかどうか
②軸脚が踏み出し脚を超えてくるか
この2つです。
基本的にはフォロースルーを考えるのではなく、
この手前で問題が解決していれば、
理想のフォロースルーが行えると考えるのがいいと思います。
よく「腕の位置が最後にここに来るように」などありますが、
手前での体重の移動を怠って、
腕の位置を修正しても意味がありません。
それは「痛み」を生み出すだけです。
そのため、①と②はワインドアップから
アクセラレーションまでがしっかり行えていたかの
ゴール地点です。
ゴールに先回りをしてもいつかバレます。
それと同じ。
ゴールにはしっかりと通るべき道があるわけです。
それらを通ったから、
①前足部に荷重がのり、
②軸脚を超えるほどの加速を
していることになります。
大谷選手の投げた際の軸脚の後方へのスライドを
〈軸脚のスライドは加速の賜物〉
いろいろな角度から語られていますが、
個人的には、速い球を投げる際の加速した体を、
柔道の一本背負いのように縦の回転が加わる時に、
その回転の力で足が後ろに跳ね上げられることだと思っています。
なので、あれは真似をするのではなく、
同じ加速を手に入れれば、勝手に手に入るという事です。
何度も言いますが、フォロースルー期で大切な事は、
フォロースルー期の手前に詰まっています。
野球肘の治療は、
痛みを取り除くと同時に
医学的な知識をもとにピッチングフォームの
アプローチも必要だという事です。
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柔道整復師:髙木慎一